君が好きだから嘘をつく
「あ~あ、これで楓が会社を辞めるって男共が聞いたらガッカリするぞ~」
「そんなことないですよ」
冗談を言う咲季先輩に笑って返す。
でもその後私の目を見つめて、
「山中くんには?転職すること伝えたの?」
優しい声で聞いてきた。私が転職する意味を理解すれば、自然な質問だ。
私にすれば、健吾との距離に決別をつけて気持ちを整理することになるのだから。
「健吾には・・伝えてません。まだ咲季先輩だけです。言わなければいけないのに、ずるいけど健吾には言えない。本当は嘘をばらしてしまった時にパッと消えてしまいたかった。今までは友達でいいから少しでもそばにいたいって思っていたのに・・もう嫌われてしまった方が楽だって思ってしまうんです」
気持ちが込み上げてしまって堪えようと奥歯で強くかみ締めてうつむく。
何度も何度もこんな気持ちになったことはあるのに、自分の決めた決断に心が重く覆われる。
-これでいいんだー
そう言葉を心に落とす。後悔は何度もしてきた。その度に言い聞かせてきた。
-これでいいんだー
目を閉じて自分に言い聞かせる。大きく息を吸って心に落とす。
「楓もやっぱり不器用だなぁ」
苦笑しながら咲季先輩は私の頭をクシャクシャっと軽く撫でた。その手の優しさに心まで撫でてもらえたような気がする。いつも私がどんな弱い言葉を言っても、逃げる選択をしても、咲季先輩は怒ることなく受け止めてくれる。そんな優しさに私はいつも甘えてしまう。
「咲季先輩、いつもごめんなさい・・ありがとうございます」
頭を下げて心の想いを言葉に込める。
「はいはい。楓がいろんな事考えて、いつも決断しているのはちゃんと分かっているからさ。だから私も応援できるんだよ。楓が転職してもさ、私達は何も変わらないでしょ?」
首を傾げながら笑顔でそう言ってくれた。その言葉が嬉しくて、顔を大きく縦に何度も振りながら『はい』と返した。そんな咲季先輩の存在に今日も心を救われた。
そしてこれからやるべき事への気持ちを整えることができた。
「じゃあこれから部長のとこへ行って来ます」
「ん?」
突然で意味が分からない顔をしている咲季先輩にはっきり伝える。
「辞表出して話してきます」
その言葉に驚きの顔を見せた。
「・・もう用意してきたんだ・・そっか・・。うん、行ってらっしゃい」
「はい、ありがとうございました」
私が立ち上がると寂しそうな顔で笑顔を見せて手を振ってくれた。私も笑顔を向け手を振った後営業部へと戻った。
自分のデスクの横に掛けてあるバッグから用意してきた辞表を手に取り、部長の姿を探すと自分のデスクで何かの資料を見ている。今なら誰もいないとタイミングを見計らい一度大きく息を吸って、すぐに席を立ち部長のデスクへ向かった。
「そんなことないですよ」
冗談を言う咲季先輩に笑って返す。
でもその後私の目を見つめて、
「山中くんには?転職すること伝えたの?」
優しい声で聞いてきた。私が転職する意味を理解すれば、自然な質問だ。
私にすれば、健吾との距離に決別をつけて気持ちを整理することになるのだから。
「健吾には・・伝えてません。まだ咲季先輩だけです。言わなければいけないのに、ずるいけど健吾には言えない。本当は嘘をばらしてしまった時にパッと消えてしまいたかった。今までは友達でいいから少しでもそばにいたいって思っていたのに・・もう嫌われてしまった方が楽だって思ってしまうんです」
気持ちが込み上げてしまって堪えようと奥歯で強くかみ締めてうつむく。
何度も何度もこんな気持ちになったことはあるのに、自分の決めた決断に心が重く覆われる。
-これでいいんだー
そう言葉を心に落とす。後悔は何度もしてきた。その度に言い聞かせてきた。
-これでいいんだー
目を閉じて自分に言い聞かせる。大きく息を吸って心に落とす。
「楓もやっぱり不器用だなぁ」
苦笑しながら咲季先輩は私の頭をクシャクシャっと軽く撫でた。その手の優しさに心まで撫でてもらえたような気がする。いつも私がどんな弱い言葉を言っても、逃げる選択をしても、咲季先輩は怒ることなく受け止めてくれる。そんな優しさに私はいつも甘えてしまう。
「咲季先輩、いつもごめんなさい・・ありがとうございます」
頭を下げて心の想いを言葉に込める。
「はいはい。楓がいろんな事考えて、いつも決断しているのはちゃんと分かっているからさ。だから私も応援できるんだよ。楓が転職してもさ、私達は何も変わらないでしょ?」
首を傾げながら笑顔でそう言ってくれた。その言葉が嬉しくて、顔を大きく縦に何度も振りながら『はい』と返した。そんな咲季先輩の存在に今日も心を救われた。
そしてこれからやるべき事への気持ちを整えることができた。
「じゃあこれから部長のとこへ行って来ます」
「ん?」
突然で意味が分からない顔をしている咲季先輩にはっきり伝える。
「辞表出して話してきます」
その言葉に驚きの顔を見せた。
「・・もう用意してきたんだ・・そっか・・。うん、行ってらっしゃい」
「はい、ありがとうございました」
私が立ち上がると寂しそうな顔で笑顔を見せて手を振ってくれた。私も笑顔を向け手を振った後営業部へと戻った。
自分のデスクの横に掛けてあるバッグから用意してきた辞表を手に取り、部長の姿を探すと自分のデスクで何かの資料を見ている。今なら誰もいないとタイミングを見計らい一度大きく息を吸って、すぐに席を立ち部長のデスクへ向かった。