君が好きだから嘘をつく
別れの時
部長から朝礼で私の退職・引継ぎについて話がされた。
部内はざわめき、みんなからの視線を感じる。
その視線と共に、『うそ~』『何で?』『どうしたの?』と、驚きや質問を投げかけられる。それらに『すいません、ご迷惑かけます』と謝りながら応答する。
その中にひときわ強い視線を感じる。すぐそばから向けられる痛いほどの強さ。
視界に入るその視線を避けて、わざと見ない振りをする。
-健吾が見ているー
みんなのようなリアクションはなく、時が止まっているかのようにジッと向けられる視線を全身で感じる。
その視線に答えて健吾を見ることはできない。転職のことは健吾に言わなかったのだから。
同期で最も仲のいい友人だったのに、一言も相談せずこうして朝礼の場で部長から聞くのだから驚いただろう。驚いただけでは済まない事も分かっている。
これまで築いた関係を無視するかのようなひどいことを私はしている。
-健吾・・ごめん・・本当にごめんなさいー
こんなやり方は最低だ。
『私、転職することにした』そう一言言えればいいのに。私が思うより健吾にとっては私の転職なんてたいしたことではないかもしれない。黙って辞めていく方が友情を裏切ることだろうから。
咲季先輩には言えた。澤田くんにも昨日の帰り伝えることができた。なのに・・健吾にだけは言えなかった。言わずに逃げ切ってしまいたかった。
部長から私の引継ぎについて担当変更の分担が言い渡された。
朝礼も終わりそれぞれの業務につき、私は今後担当先の引き継ぎをする為の書類分担をしようとした時、デスク越しから私が今最も避けたい声が聞こえた。
「楓、どういうことだよ」
ひどく冷めた声で、今まで聞いたことのない健吾の怒りの感情が込められていた。
そんな感情にさせてしまうのは分かっていたけど、実際聞いてしまうと心が震える。
「・・えっ・・何が?」
平然と答えようと思っていたのに、健吾の顔は見れず言葉も震える。
そんな私の様子に怒ったのか、イスから立ち上がり私の横へ来ると、
「ちょっとこっち来い」
と有無を言わさないように私の腕をつかんで廊下へ連れ出した。そのまま前に電話を無視した時に連れて行かれた非常階段まで引っ張られていった。
そして2人きりになって向き合うと共に鋭い眼差しで私を見下ろして、
「何だよ辞めるって、どういうことだよ!」
感情をあらわに言い切った。目線も逃がさないと言うように距離をつめて。
その空気に負けそうになる。それでも何度も頭で考えたシュミレーションをどう口にするか余裕のないこの場で考える。
部内はざわめき、みんなからの視線を感じる。
その視線と共に、『うそ~』『何で?』『どうしたの?』と、驚きや質問を投げかけられる。それらに『すいません、ご迷惑かけます』と謝りながら応答する。
その中にひときわ強い視線を感じる。すぐそばから向けられる痛いほどの強さ。
視界に入るその視線を避けて、わざと見ない振りをする。
-健吾が見ているー
みんなのようなリアクションはなく、時が止まっているかのようにジッと向けられる視線を全身で感じる。
その視線に答えて健吾を見ることはできない。転職のことは健吾に言わなかったのだから。
同期で最も仲のいい友人だったのに、一言も相談せずこうして朝礼の場で部長から聞くのだから驚いただろう。驚いただけでは済まない事も分かっている。
これまで築いた関係を無視するかのようなひどいことを私はしている。
-健吾・・ごめん・・本当にごめんなさいー
こんなやり方は最低だ。
『私、転職することにした』そう一言言えればいいのに。私が思うより健吾にとっては私の転職なんてたいしたことではないかもしれない。黙って辞めていく方が友情を裏切ることだろうから。
咲季先輩には言えた。澤田くんにも昨日の帰り伝えることができた。なのに・・健吾にだけは言えなかった。言わずに逃げ切ってしまいたかった。
部長から私の引継ぎについて担当変更の分担が言い渡された。
朝礼も終わりそれぞれの業務につき、私は今後担当先の引き継ぎをする為の書類分担をしようとした時、デスク越しから私が今最も避けたい声が聞こえた。
「楓、どういうことだよ」
ひどく冷めた声で、今まで聞いたことのない健吾の怒りの感情が込められていた。
そんな感情にさせてしまうのは分かっていたけど、実際聞いてしまうと心が震える。
「・・えっ・・何が?」
平然と答えようと思っていたのに、健吾の顔は見れず言葉も震える。
そんな私の様子に怒ったのか、イスから立ち上がり私の横へ来ると、
「ちょっとこっち来い」
と有無を言わさないように私の腕をつかんで廊下へ連れ出した。そのまま前に電話を無視した時に連れて行かれた非常階段まで引っ張られていった。
そして2人きりになって向き合うと共に鋭い眼差しで私を見下ろして、
「何だよ辞めるって、どういうことだよ!」
感情をあらわに言い切った。目線も逃がさないと言うように距離をつめて。
その空気に負けそうになる。それでも何度も頭で考えたシュミレーションをどう口にするか余裕のないこの場で考える。