君が好きだから嘘をつく
「ねぇ・・」

「ん?」

甘い声で答え、視線を合わせてくる。

「今のキスで何回目?」

「ん?」

少し首を傾け、私の問いを探る。

「健吾と私のキス、これで何回目?」

ずるいことを聞きながら、私の視線もイタズラな表情になる。答えは間違ってもいい。
それでも健吾に聞いてみたくなった。

「3回目」

予想外の正解に、驚き瞳も口もポカンと開いてしまう。

「えっ、何で?」

「それでこれが4回目」

そう言って、チュッとリップ音たてながらフレンチキスをしてきた。
そして苦笑しながら教えてくれた。

「楓が知りたいのは1回目だろ?」

「えっ・・」

戸惑いの声が出る。

「1回目は・・美好でお前にキスした」

「嘘!何で・・だってあの時・・」

「酔っ払って潰れていた。って思ってるだろ?でも酔えなくて、お前が来たのが分かって寝たふりしていた」

「何で?」

健吾の言ってることが分からなくて、一瞬混乱する。だって・・あのキスは酔って寝ぼけて伊東さんと間違えて私にしたと思っていたのに。

「あの時はさ、友達の結婚式の日にお前を迎えに行ってあいつが追いかけて来て話してるのを見たこととか、その後コーヒースタンドでお前に触れていたのを見てむかついたことをグチャグチャ思い出して、いくら飲んでも酔えなかったんだよ。で、そんなとこへお前が来たから寝たふりしてんだ。それで、俺を起こすお前の顔を見たら・・・キスしてた」

「私ってちゃんと分かっていたの?」

「ちゃんと分かっていた。今思えばあいつに取られるって焦りと嫉妬だったんだけど、モヤモヤしてたあの時、お前をそばで見て惹かれたんだ。気付いたら腕を引いてキスしてた」

「伊東さんと間違えたんじゃなくて?」

「違う、ちゃんと楓だって分かっていた。でも、その時は何でキスしたのか分からなかったけど、きっとあの頃からお前のことが気になってしかたなかたんだ。だけどそれが好きだって気持ちには気付かなかった」

思ってもいなかった告白に言葉が出なかった。健吾がそんな風に感じていたなんて。

「でも、お前に突き飛ばされちゃったし、次の日に謝ろうとしたけど何にもなかったように普通でいるお前に、結局何も言えなかったけどな」

苦笑しながら話す健吾に申し訳ない気持ちになる。

「ごめんね」

心を込めて謝ると、

「じゃあ、今度は楓からキスして」

少し低い声で笑みを浮かべ、健吾から誘惑してきた。
その誘いに乗るように、背伸びをして上を見上げ健吾の唇に近づくと、健吾も唇を寄せてきた。


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