君が好きだから嘘をつく
ゆっくりと唇が重なり、唇と唇が触れる瞬間の感触がたまらなく官能を感じさせる。
優しく触れた健吾の唇は、私の唇の真ん中を愛でるように何度も触れては離れる。
触れる度に快感をもたらすその唇を瞳を開けてぼんやりと見つめた後に、健吾の瞳に視線を移すと熱い眼差しで私を見つめていた。
その瞳の色気に思わず吐息のようなため息をついた途端、私の唇を食むような深い口づけに変化した。
上唇・下唇を交互に食んで、クチュクチュと淫靡なリップ音が脳内を麻痺させ、思考が乱れ甘い吐息が抑えられなくなる。

「・・はぁ・・ぁ」

わずかに唇が開いたとこへ、熱い舌が押し開くように差し込まれてきた。その熱を私も両唇で何度も挟むように受け入れ、健吾の舌の感触を味わう。
堪らなく甘くて愛しい。
そして健吾の下唇を私の唇でくわえたまま瞳を見上げると、背中を強く抱きしめてきて今度は私の唇を激しく求めてきた。

「・・っん・・」

身動きできない位に抱きしめられ、その力強さによろけて壁に押し当たると、そのまま身体を固定されて健吾のされるがままになってしまった。
優しいキスは完全に深い口づけに変わり、唇を舐めながら奥へ奥へと舌を入れて、口腔内の全てを味わうかのように占領し続ける。
お互いの舌が混ざり合う音に、そして気持ち良さに力が抜けて行く。
口腔内に溢れるお互いの唾液を呼吸するのと同じく自然に飲み込み、またくり返す。
それでも私の唇から溢れた唾液を健吾は舐め上げた。そしてもう一度優しくキスをすると、その唇を頬に移動させ、更に降りて首筋を捕らえた。

「んっ・・ぁ・・」

強い快感を得て、震えながらさっきより大きく反応してしまう。身が縮み息を吐きその感触から思わず逃げると、右手で顎を押さえられまた唇を捕らえた後、健吾は熱い眼差しを見せた。

「悪い、止めてやれない」

そう言うと私を強く抱きしめた後、肩を抱いて寝室へと連れて行く。
キスをしながらベッドへ押し倒されると、健吾の重みで現実を感じる。
おでこから鼻先・頬から首筋へと優しくキスする健吾に、つい無粋なことを言ってしまう。

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