君が好きだから嘘をつく
「楓、楓」

声の聞こえた方を見ると、咲季先輩が自分のデスクに座りながら私に手招きしている。
ん?っと頭を傾げると、『おいで』と左手で自分の隣の席を叩いている。
困ったような笑顔を見ると何か言いたいんだなって察知できて、ミルクティの缶を持って咲季先輩の示した席に座った。

「何ですか?」

「見たんでしょ?そのミルクティー買いに行った時。私もさっき帰って来た時見たからさ」

私に顔を寄せて小さい声で言ってくる。
個人名は出さないけど、言いたいことは分かる。

「・・見ましたよ」

「う~ん、やっぱり嫌だよね。あの2人ってさ、どうなんだろう?楽しそうに話しているけど、いい雰囲気って感じでもないよね」

「会社の中だからじゃないですか?」

心のモヤモヤを抱えながら、ミルクティのふたをを開けてグビグビ飲む。
昨日あんなに幸せな気持ちになれたのに、もうこんなに黒い気持ちになってしまうなんて。
・・・まあ、これが現実なんだろうけど。

「そっか~、何か見ていても兄と妹みたいな雰囲気だけどね」

「それ聞いたら健吾泣きますよ」

その言葉を聞いて咲季先輩が鼻で笑う。

「楓は誰の味方をしているんだか。そう言いながらもやっぱり嫌だったんでしょ?」

「そりゃ~まあ」

声のトーンが落ちる。目線も自然と落ちてくる。
そんな私の顔を見て、咲季先輩も困った表情を見せた。

「ごめん、嫌な話したね。でもさ、帰って来た時の楓の顔が寂しそうでつい声かけちゃったよ。ね!もう今日は仕事終わらせてご飯食べに行かない?」

「そうですね、じゃあ行きましょう」

咲季先輩の気持ちが伝わってきて笑顔になれた。

とりあえず自分のデスクに戻りバッグの中を整理していると、携帯の着信に気がついた。
見ると英輔からメールが来ていた。
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