甘き死の花、愛しき絶望
「待っ…… 明日香……」
息も絶え絶えな智樹に比べ、明日香の方は、余裕らしい。
教科書の類など、全く入ってないことが決定な薄い学生カバンを智樹の分まで左手で二つ、つかみ。
右手で持っている食パンを時々かじりながら走っているのに、その差はどんどん開くばかりだった。
「もう、ウサギったら、相変わらず足、遅~~
破壊的に運動神経とか、ないよね?」
右手に持った食パンをもぐもぐやりながら、足を止め。
呆れ返った顔を見せた明日香に智樹も自分の膝に、両手を置いて休憩する。
「しかた……無いだろ?
ヒト……には、向き不向きってモノが……」
ぜいぜいと息をはずませ、なんとか返事をする智樹に、明日香は、目を細めた。
「だからって、ウサギ、勉強も苦手じゃん。
中学の一番最初のテストは確かに成績良かったはずなのにさ~~
次からは、がた落ちで、テストのたびに、最下位争いを繰り返す、万年赤点王子様!
学校の先生は、な~ぜ~お~ち~る~って嘆いてたけど、あたし、知ってるわよ!
夜遅くまで、パソコン開いて遊んでるでしょう?
ウサギは、オタクってヤツになったのよね!?」
「……オタク?
何だよ、ソレ!?」
「あたしも良く知らないわよ!
アニメとか、パソコンが好きなヒトたちのことでしょう?
……なのに、よくもまあ。
この城南高校に入学できたわよね?」