甘き死の花、愛しき絶望
「本気、見せるなら『今』でしょ?
 高校って、中学と違って、落第することもあるんだってさ!
 まじめに走らないと、本当に遅刻するわよ!
 勉強も運動もできないヒトは、せめて毎日の生活態度っていうやつをきちんとしておかないとマズイんじゃない?
 同い年で家もお隣さんな、ウサギを後輩にするのは、イヤだからね!」

 なんて。

 明日香は、本当に智樹を心配しているのか、からかって遊んでいるのか良くわからない。

 けれど。

 思ったことを、遠慮なく、本人の目の前で言い、屈託なく笑う。

 智樹は、そんな明日香が、好きだった。

 最初に出会った時だって、そうだ。

 初めて、智樹を見た明日香は、大きな目を更に見開いて、言ったのだ。

「うざき ともき くんは、ウサギさんみたいだね!」

 ……と。

 その、大きな声に二人の周りにいた大人たちは、明らかにぎょっとして。

「智樹くんは『アルビノ』って言って、髪と目の色が違うけど、普通の男の子です。
 みなさん、仲良くしましょうね」

 ……なんて取り繕っていたけれど。

 智樹は、明日香にはっきり言って貰って、ちょっと嬉しかったのだ。

 自分では、もう。

 頭の白い髪が、紅い瞳が、他の誰とも違うことに気がついていたのに。

 大人たちは、まるで『見なかった』ことにしようとしてたことがイヤだったからだ。
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