甘き死の花、愛しき絶望
 そして、そんな大人にくっついている子供たちも、また。

 智樹の前では、何も言わないくせに、影でこそこそしゃべってるところが嫌だった。

 そんな、状況だったとき。

 明日香は、にっこり笑い、はっきり『ウサギ』って言ってくれたのだ。

「僕の髪や……目、変かな?」

 みんなが『なかったこと』にしたがるのは、見るに耐えないほど醜いからかもしれない、なんて。

 子ども心に傷を負い。

 恐る恐る聞いた智樹の言葉を、明日香は、明るく笑って否定する。

「ん~~ん!
 あたしは、かわいいと思う!
 いいなぁ、赤いお目々に白い髪!」

 子どもとは、いえ。

 男の子相手に『可愛い』はどうか、とも思うけれど。

 そんな明日香の言葉に、智樹はなんだかホッとしたのだ。

 自分は、ありのままの自分で良いんだと、明日香に言われたような気がして。

 中学校に入り、『校則違反の脱色に間違われないため』なんて、良く判らない理由で髪を黒く染めることになり。

 紅い瞳はカラー・コンタクトをはめて、隠すようになったけれど。

 智樹の心は変わらずに、ずーっと明日香のことが、好きだった。

 明日香は、智樹とは、真逆で運動が得意だ。

 いくつも運動部を掛け持ちしてるんだ!

 そう言って笑うキレイな顔は、健康そうに日焼けして小麦色の肌をしていた。
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