太陽と月

目の前の大きな背中は、いつもと変わらないのに

ユラユラと、まるで蜃気楼の様に揺れて

今にも消えてしまいそうだった



立ち止まったのに、何も話さずに前を見つめる主任

そして




「後は俺がやる。瀬川は事務所に戻ってろ」

「でも…」

「いいから」



一度も私の目を見ずに、そう切り捨てる様に言った主任

そして、私を残して

行ってしまった









「失礼します」



カチャっと静かに事務所のドアを開けて中に入る

すると




「あ~瀬川~ぼやぼやしてると、アイス無くなっちゃうよ~」



どこからともなく、部長の声がして顔を上げると

事務所にいた先輩達が美味しそうにアイスを頬張っていた

そして、その中心にいる人物は




「大丈夫。瀬川さんの分はちゃんと取っておいてあるから」




眩しい程の

藍原悠理さんだった
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