太陽と月
目の前の大きな背中は、いつもと変わらないのに
ユラユラと、まるで蜃気楼の様に揺れて
今にも消えてしまいそうだった
立ち止まったのに、何も話さずに前を見つめる主任
そして
「後は俺がやる。瀬川は事務所に戻ってろ」
「でも…」
「いいから」
一度も私の目を見ずに、そう切り捨てる様に言った主任
そして、私を残して
行ってしまった
◇
「失礼します」
カチャっと静かに事務所のドアを開けて中に入る
すると
「あ~瀬川~ぼやぼやしてると、アイス無くなっちゃうよ~」
どこからともなく、部長の声がして顔を上げると
事務所にいた先輩達が美味しそうにアイスを頬張っていた
そして、その中心にいる人物は
「大丈夫。瀬川さんの分はちゃんと取っておいてあるから」
眩しい程の
藍原悠理さんだった