太陽と月


「はい。どうぞ」

「ありがとうございます」



茫然と入口に立っていた私に、わざわざアイスを届けてくれた星野支配人のお嫁さん

ニッコリと笑って、お疲れ様と言った




「そういえば、瀬川さんって莉奈の旦那さんの妹さんなんだって?」

「え? 莉奈さんの事知ってるんですか?」




ちょうど近くにあった椅子に腰かけた藍原さんの隣に私も自然と腰かける

あ…でも、以前もここで働いてたんだから名前くらい知ってるよね




「もちろん! 私と莉奈は同期だもん」

「同期!?」

「うん。今でもたまに食事に行ったりするよ」



驚いて、食べていたアイスを零しそうになる

同期!? 莉奈さんと藍原さんが!?




「莉奈は元気にしてる?」

「あ…はい。本当の姉ちゃんみたいです」

「ふふっ。それならよかった」




動揺する私に、柔らかく微笑む藍原さん

なんだか、陽だまりみたいに温かい人だ

一緒にいるだけで、心が安らぐ




「現役の時は、大西くんと莉奈と3人で、よく飲み会とかしたな」




それでも、零れたその言葉にドクンと心臓が鳴る

聞きなれた名前なのに、藍原さんの口から聞くその名前は、なぜか違うものに感じた
< 145 / 353 >

この作品をシェア

pagetop