太陽と月



「お‥大西主任とも、仲が良かったんですか?」



きっと、そう言った言葉は震えていた

それでも、笑顔を絶やさない藍原さんは優しく瞳を細めて私を見つめる



「うん。私にとって、一番頼りにしてた後輩だったな」

「後輩‥」

「何度も何度も助けてもらったの。仕事でも私生活でも。今思えば、本当にいろんな事で助けられていたのね」



そう言って、大西主任のデスクに目をやる藍原さん

どこまでも綺麗な横顔が、さっき見た大西主任の横顔と重なる



愛おしそうに、藍原さんを見つめる大西主任

同じ様に、愛おしそうに誰かを見つめる藍原さん

その視線の先には




「はる。ゆう。走り回るな」




星野支配人がいた。



交わる事のない赤い糸

こんな小さな箱庭の中で、大西主任は自分でない誰かを見つめる藍原さんを、ずっと想ってたんだろうか

叶う事がないと分かっているのに、どうして――?



それでも

ふと、自分に置き換えて考えてみる

そして、思い当たる



自分でない誰かを想っている人を好きになったのは、何も大西主任だけじゃない

そして、そんな簡単に忘れられる程軽い気持ちじゃないと



悲しいけど

大西主任の気持ちが、痛い程分かった――
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