太陽と月
「――春人、優菜。そろそろ帰るよ」
「「やー!!」」
「だーめ。みんなの邪魔になるでしょ」
悶々としていた私の耳に、不意にそんな声が響く
すると、暴れる2人の天使を軽々と両脇に抱えた星野支配人が、藍原さんの元に歩み寄ってきた
「気を付けて帰れよ」
「ありがと。ほら、2人とも、行くよ」
あの星野支配人に子供がいた事は仰天だったけど、2人の子供を前にした時の顔は、父親の顔だった
パタパタと音を立てて、出口に向かう2つの影
それを小さな溜息を吐いてゆっくりと追う星野支配人
「バタバタしてゴメンね。また莉奈によろしく言っておいて」
そんな3人を見て、幸せそうに溜息を吐いた藍原さんが、ゆっくりと立ち上がった
その姿を見て、思わず声を上げる
「大西主任に会わなくていいんですか?」
ザワザワと騒がしい事務所の中では、私の声は目の前の藍原さんにしか届かない
そんな私の言葉を聞いて、微かに目を細めた彼女
そして
「――瀬川さんは、優しいのね」
微かに作った笑みの中で、小さくそう言った