太陽と月


目の前には、大理石の床に溜まる水溜りだけ

コツコツと背後で革靴の音が響く




「――私…諦めませんから」




呟いた声と共に、チャペルの扉が開く音がする

途端に眩しいくらいの明かりが入ってきて、チャペルがより一層明るくなった




「――それは、瀬川が決めればいい」

「――」

「でも、俺と瀬川の未来が重なる事はない。この先――何があってもね」




そう言い残して、パタンと扉の閉まる音が響く

再び音のなくなった世界に、ポタリと涙が一粒落ちた




「ははっ・・・勢いであんな事言っちゃって…バカみたい…何言ってんだろ…私」




途端に押し寄せる後悔の波

こうなる事は分かっていたのに

言うつもりなんて無かったのに



止める事ができなかった



想いが一気に溢れて

零れた


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