太陽と月



「――大西は...ね」



しばらくすると、ポツリと私の耳元でそう話し出した莉奈さん

しゃくり上げる私の背中をさすりながら、ゆっくりゆっくり話しだした




「――悠理に憧れて、ウエディングプランナーの道に入ったの。そのうち憧れは恋に変わって、アイツの心の中はいつも悠理が中心だった。それでも、悠理は今の旦那さんと結婚をした。もちろん結婚式もうちの式場で挙げたから、見てる。子供が産まれた時も、みんなで見に行った」

「――」

「その時ね..アイツ言ったの」

「なに・・・を?」

「涙って、枯れないんですね――って」



その言葉に、胸が裂かれる思いだった



運命の人だと思える程、好きな人の結婚式や出産

それらを間近で見届ける


それって、身を裂かれるより

辛い事



そんな想いを繰り返してまでも

まだ藍原さんの事を―――?




「その時ね…アイツ言ったの。…大切なものができても、叶えられない人と。大切なものができない人。どっちが良いんだろう――って」

「――」

「私は...答えてあげられなかった」




そう言った莉奈さんの言葉は、余りにも弱弱しかった
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