太陽と月
ゆっくり私を抱きしめていた腕を緩めて、涙で濡れた私の顔を優しく拭いてくれた莉奈さん
「どうしてみんな、幸せになれないんだろうね」
悲しそうにそう言って、瞳を伏せた莉奈さん
藍原さんとは同期で、大西主任とも仲が良くて、私とは義妹の莉奈さん
いろんな想いの狭間に立たされて、きっと莉奈さんも辛い想いをしてるんじゃないだろうか
誰かが幸せになれば、誰かが悲しむ
抜け出せない迷路の中で彷徨うのは、私達だけじゃないのかもしれない
それでも
「ねぇ...莉奈さん」
「ん?」
「私...きっと主任の一番の理解者になれるかもしれない」
どこか悲しそうに私を見つめる莉奈さんに、ニッコリと微笑む
頬に流れた無数の涙のせいで、頬が突っ張るのを感じた
「忘れたくても、忘れられないのは...きっと、その人の事を想い続ける事が、幸せだからだよ」
「――」
「もし主任を想う事を止めて、自分の中から主任を消してしまったら、私きっと空っぽになる」
「――」
「その人がいない人生なんて、私にはきっと意味のないものなんだよ」
例え結ばれる事がなくても
想っていたい
心の中に住んでいてほしい
忘れる事の方が
私にとっては、辛くて悲しい事なの――