太陽と月








「――指導役を...交代ですか?」



朝の陽ざしが窓の外から漏れるガラス張りの打ち合わせ室に、私の頼りない声が落ちる

目の前には、とてつもなく長い足を組んだ星野支配人

真っ黒な瞳で私を見つめて、表情1つ変えずに指導役の変更を告げた




「大西から話があった。これから会議などで忙しくなるし、瀬川には沢山のプランナーとペアを組んで、そのプランナーごとの個性を抜き取ってほしいってな」

「――」

「それには、俺も同感だ。大西だけじゃなく女性プランナーからも知識や話術を学んでほしい」



茫然と椅子に座り込む私に、淡々と告げる星野支配人

ペラペラとテーブルに広がる書類をめくっている




「とりあえず、今日は俺の営業につくように」

「――はい」

「以上。仕事に戻っていいぞ」




そう言ってトントンと資料の束を纏めて、伏せていた瞳を上げた支配人

その姿をぼんやりと見つめていると、胸がチクリと痛んだ



驚く程整った顔に、文句のつけようがない均等の取れた体


誰もが羨む星野支配人

――大西主任が想う、藍原さんの旦那さん


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