太陽と月
ゆるゆると下がる視線
不安の種が一気に心を絡め取る
すると
「俺も、ここに入るまで結婚式場になんて興味もなかったよ」
真っ白な世界に落ちる、声
伏せていた瞳を上げると、目の前には太陽の様にニッコリと笑う大西主任がいた
「大学の頃は適当に給料のいい会社を探してたし、こういう世界に入ろうとか、当時は全く考えてなかった」
「そう..なんですか?」
「キッカケは――・・・そうだな、姉の結婚式に参加した時かな」
「――」
「単純に感動した。俺も、この仕事をやってみたいって」
そう言って、私に向き直って大きな瞳を細めた大西主任
その温かい微笑みに、心が緩む
「大切なのは、この仕事を好きになる事」
「好きに..ですか?」
「特別な知識なんて、いらない。確かにあれば損はしないだろうけど、現場では何の役にも立たない事が多いからね」
「そうなんですか?」
「要は経験だよ」
背の小さい私の目線と同じ様に微かに腰を折って、そう話す大西主任
その明るい声に、少しずつ心に日が射す