太陽と月


見惚れてしまいそうな艶やかな笑みに、ポカンと口を開けて言葉を無くす


きっと世界中探しても、こんな男前いないんじゃないかな

どこかミステリアスだけど、芯はしっかりしていて

すべてを預けてもいいとさえ思える安心感がある

こんな人が上司だなんて、地元のみんなに言ったら卒倒するだろうなぁ



そんな訳の分からない事を考える私を横目に、腕時計に目を落とした星野支配人




「そろそろ行くぞ」




そう言って、組んでいた長い足を崩して立ち上がった支配人

その俳優顔負けの姿に、道行く人が振り返っている



「あのっ星野支配人」

「ん?」

「ありがとうございますっ」



歩き出しそうになった星野支配人の背中にそう言って勢いよくお辞儀をした

すると、振り返ってもう一度不敵な笑みで笑った支配人



「行くぞ」



そう言って、歩き出した歩幅は

さっきよりも狭く



ゆっくりだった

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