太陽と月
「その結婚式が成功したら・・・私の事、ちゃんと見てください」
「――」
「藍原さんじゃなくて、一度でいいんです。私を見てください」
主任の心の中にある、藍原さんという名の壁
その壁の中に閉じこもって、主任は周りを見ようとしない
私の事も、きっと一度もちゃんと見てくれていない
「そんな事しても――」
「約束です!! 私、絶対成功させますからっ」
何か言いだしそうな大西主任の言葉を遮って、大きな声でそう言う
そして、まるで言い逃げの様に、勢いよく駆けだした
後ろでは、私の名前を呼ぶ主任の声が聞こえる
それでも、一度も振り返らずに、駆けた
もう後戻りはできない
ううん。
もともと進んでいなかった時間
それが、少しだけ前に動いただけ
立ち止まった先で、もう一度空を見上げる
ポツリと浮かんだ星を見つめて、瞳をそっと閉じた
どうか、届いてと
願って