太陽と月



「――頼むから、瀬川まで倒れないでくれよ」




そして、どこか小さな声でそう言った主任

途切れ途切れに聞こえた、小さな言葉

思わず聞き返そうとした、その時




「ん。美味いなこれ」




いつの間にか空けていたおにぎりに、大きな口でかぶりついた主任

もさもさと口を動かしながら、美味しそうに食べ始めた




「あぁ―!! それ私のです!!」

「これは、俺用に買ってきたも-の」

「私も、その味食べたかったんですよ!!」

「じゃぁ、半分食う?」

「え!? じゃぁ、いただきます」

「え!? 食うの?」

「え? くれるんじゃないんですか?」

「――」

「あ-!! なんで食べるんですかっ!!!」

「やっぱり、あげない」




ケタケタと太陽みたいな笑顔が輝く

端正な顔が一気に幼くなる



好きだな

やっぱり大好きだ



こうやって笑い合える事が嬉しすぎて

泣いてしまいそうだった

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