太陽と月
急に静かになった車内に微かに音楽だけが響いている
――あれ?
でも、乗った時はこんなにボリューム小さかったっけ?
そこで、もしかしてと淡い期待の様なものが生まれる
もしかして、私が寝てたからボリューム落としてくれたのかな?
起こさない様にって――
チラリと隣を盗み見ると、端正な横顔が見える
その姿に無条件に胸がいっぱいになって、勢いよく視線を前に戻した
私の都合のいい妄想だけど
本当にそうかは分からないけど
でも―――優しい主任の事だから、そうだと思う
寝ている私に気を使って、音楽を小さくしてくれたんだ
そんな些細な事すらも、嬉しくて飛び跳ねたくなる
好きが溢れて、苦しくなる
「――ここ、真っ直ぐでいいの?」
「え!? あ、はい。あそこに見えるアパートです」
意識が他の方向にいっていた私に、主任の声が届いて我に返る
勢いよく顔を上げると、いつの間にか家のすぐ側まできていた
その瞬間、一気に寂しくなる
もっと一緒にいたいな
そんな子供みたいな事を思ったけど、何も言えないまま家の前に着いた