太陽と月


いいお客さんで良かった



なんだか、ホクホクした気持ちでその日の打ち合わせは終わった




それから、数日後――




「花音~携帯鳴ってるよ~」

「はいっ!!」



コピー機の前で格闘していると、飯島部長の大きな声が事務所に響く

バタバタと紙を胸に抱えてデスクに戻ると、ブルブルと携帯が震えていた



急いで携帯を掴みとり、画面を見ると知らない番号


誰だろ? でも、きっとお客さんだよね


そう思って、急いで通話ボタンを押した




「はいっ。瀬川です」

『あ、瀬川さん? お疲れ様です』

「お..お疲れ様ですっ」

『あ、えっと、先日余興の打合せでお伺いした南です』

「南様...」

『え~っと...あ、結婚式場の厨房で働いてたって話してた――』

「あ!! はいっ! 先日はわざわざ、ありがとうございました!!」



受話器の向こうの男性の顔が、思い出の中からポンっと浮かんだ



あの、物腰柔らかい人だっ!!

今更だけど、南さんっていうんだ


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