太陽と月


「あの..どうかされましたか?」



何故か少し嬉しく思いながらも、事務所を一度出て、そう問いかける

でも一歩外に出た瞬間、まだまだ夏が尾を引く中で、じんわりと汗が滲んだ




『急で申し訳ないんですが、今日って空いてますか?』

「今日の...えっと、何時でしょう」

『仕事終ってからだから、7時とか? 大丈夫でしょうか』

「あ、はい。私は大丈夫です」



まだ、担当物件が1つしかない私

打合せでスケジュールが埋まってる先輩方の様にスケジュール張を見なくても、自分の空き時間が分かる

そこが少し悲しかったりするんだけど..



『良かった~。それなら、余興の事で相談したいんで、お伺いしてもいいですか?』

「はい。大丈夫です」

『すいません。では、7時にお願いします』

「はい。お待ちしております」



丁寧な話し方がうつって、自然と私もゆっくりと丁寧な話し方になる

何度も何度も壁に向かってお辞儀をして、電話を切った



真っ暗になった画面を見ながら、フツフツと湧く嬉しい気持ちを噛みしめる

お客さんにプランナーとして必要とされた事が

頼りにされている事が


なんだかとても嬉しかった


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