太陽と月
「ここを左でお願いします」
微かな音楽だけが響く車内に、私の小さな声が響く
見慣れた景色が窓の外に見え始める
その瞬間、ふと主任の事を思いだす
つい最近も、ここまで主任に送ってもらった
本当に少しの時間だったけど、まるで長い夢の様に穏やかな時間だった
そんな主任と過ごした場所が、例えどんなに小さな事でも、こんなにも私の胸の中で息づいている
何度も何度も、同じ光景を、交わした会話をリフレインして
何度も何度も、飽きる事なく主任の姿に胸を締め付ける
その度に、やっぱり私は主任の事が大好きなんだなと思い知らされる
切なさと愛しさが混ざって
訳の分からない溜息が出る
すると
「瀬川さんは、我慢が上手だね」
不意に聞こえた声に、勢いよく顔を上げた