太陽と月

運転席の方に視線を向けると、ハンドルを握ったままの南様が私を横目に見ていた

微かな街灯が、南様の横顔を照らしている




「我慢...ですか?」

「うん。無理して笑ってるのバレバレ」

「――」

「分かるよ。本当の笑顔と作られた笑顔は、全然違うから」




その言葉に思わず口を噤む


自分でも分かっていたから

無理に笑顔を作っている事――




「俺の自惚れじゃなかったら...瀬川さんは、誰かに聞いてほしいんじゃないのかな」

「――」

「もう、1人じゃ抱えきれないんでしょ?」




優しい声色の南様がふっと表情を和らげてそう言う

そして、下を向いた私に向かって




「違うかな」




優しく背中を押してくれた

< 234 / 353 >

この作品をシェア

pagetop