太陽と月


伏せていた瞳を落ちあげて、窓の外に目をやる


真っ暗な世界にポツンと輝くのは

いつもと同じ、淡く輝くお月様

今日も寂しそうに、1人でいる



遥か彼方に輝く、太陽を想って

淡く輝いている




「南様は――・・・大切なものができても叶えられない人と。大切なものができない人。どっちが幸せだと思います?」




以前、莉奈さんから聞いた言葉

大西主任が藍原さんが出産した時に、零した言葉



きっと、本音だったんだと思う

胸の想いが満タンで、つい零れた小さな大西主任の弱さ

張っていた糸が今にも切れてしまいそうな程、主任の気持ちが満タンだったんだ

藍原さんで――



今は、私も同じ気持ちだ

こんなにも苦しい想いをするなら

いっそのこと、何もない世界を生きていた方が楽なんじゃないかと思う

そうしたら、こんなに涙が出そうな苦しさも味わわなくて済んだんじゃないかな



シンと静まり返った車内

どこか息苦しい空気の中、ポツリと声が聞こえた




「俺はどんなに苦しくても、夢を見ていたいな」




そう言った南様の声は、凛としていた

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