太陽と月
満面の笑みを振りまいて、幸せを滲み出している新郎新婦を控室へお通しする
それからは休む暇なく、披露宴会場とチャペルを往復した
絶え間なくインカムから、スタッフ達の声が聞こえる
『新郎・新婦両家親族到着しました』
『受付残り5名です』
『披露宴会場、音響照明、料理の確認終了です』
「瀬川、了解しました。新郎新婦の準備が整いましたので、お客様をチャペルへ移動させて下さい」
『了解』
小声でインカムにそう言うと、一斉に先輩達の声が、耳元に流れてくる
私の手の行き届かない様な所
足りなかった所を、瞬時に見つけて埋めてくれる先輩達
本当にありがたかった
「始めるぞ。瀬川」
ドキドキと胸の高まる心臓を押さえて前を見据えていると、隣に立っていた星野支配人が小さく囁く
隣を向くと、いつものポーカーフェイスで私を見つめる真っ黒な瞳があった
「はいっ」
緊張で震えそうな足に力を入れて、お腹の底から声を出す
大丈夫―――
そう言い聞かせて
一度深く息を吐いた