太陽と月
足早に会場に背を向けて、駅へと向かう
それでも、こんなハッキリした頭ではいたくなかった
もう、何もかも忘れたい
――何も考えたくない
フラフラとネオンが灯る店に潜り込み
店で一番強い酒を注文する
正直、こんな酒の飲み方は好きじゃない
それでも、頭の中を空っぽにするには
これが一番手っ取り早かった
「ねぇ、一人?」
だから不意に声をかけてきた女性の声も、ぼんやりと水の中で聞いている様な感覚だった
薄暗い店内で浮かび上がる1人の女性
虚ろな瞳の俺をじっと見つめている
「私も一人なの、一緒に飲まない?」
どこか鼻につく話し方で、隣に腰かけた女性
俺はその様子を横目に、もう一杯酒を注文した