太陽と月


首を傾げた俺を焦らす様に、悪戯っ子の様な顔で悠理さんの顔を見つめる飯島部長

そんな部長の表情を見て、少し照れた様に笑った悠理さん



なんだ?



そう思った瞬間―――





「悠理が妊娠したんだって」




聞こえた言葉は、俺の心に届いていただろうか




「え?」



案の定聞き返した俺を見て、ケラケラと笑う飯島部長



「だーかーらーっ、悠理のお腹に赤ちゃんがいるの!! あの星野とのっ」




ご丁寧に再度言われた言葉

その瞬間、勢いよく顔を上げて悠理さんを見た



どこか幸せそうに微笑んで

愛おしそうにお腹を撫でた



途端に真っ暗になる世界

音も色も失って

思考が停止する




「おめでとうございます」




だから、口から出た言葉は

きっと、俺の言葉じゃない
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