太陽と月

微かな沈黙が続く

鮮やかな夕日が窓の外から射しこんできて、俺達を照らしだす

あまりにも眩しいそれを俺は茫然と見つめた

すると




「まだ――忘れられないんだ?」




缶コーヒーを一口飲んでから、小さくそう言った莉奈さん

チラリと隣を見たけど、真っ直ぐ前を向いたままだった



莉奈さんと同じ様に再び前を向いて、じっと床を見つめる

今言われた言葉を飲み込んで、ギュッと缶コーヒーを握りしめた



さっき見た天使達の顔が、頭から離れない

思わず瞼を閉じると、暗闇の中に彼女の笑顔が浮かんだ




「――何度も、忘れようとしたんですけどね」




自嘲気に笑った声は、小さく床に落ちて消えた



深い沈黙が俺達の間に流れる

きっと、ずっと莉奈さんは気づいていた



俺が悠理さんを忘れられなかった事

今もこんなに好きな事




「私は、大西には幸せになってほしい」

「――」

「これ以上、傷つく恋はやめなよ」




莉奈さんの擦れそうな声が俺に届く



分かってる

それが正論だって

正しい答えだって



何度も何度も自分に言い聞かせた言葉だから



――だけど

本気で忘れられるなら

泣けるほど、愛したりはしない
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