太陽と月


「あんた、笑わなくなったね」

「――」

「笑えてないよ。全然」



そう言って、スタスタと俺の隣を横切って行った莉奈さん


その姿を、ただじっと見つめて

見えなくなるまで、ただ茫然と立ち尽くした




「笑えていない...か」




なんとなく、分かっていた

心から笑った事、ここ最近なかったから



悠理さんと、莉奈さんと一緒に働いていた頃は

毎日が楽しくて、輝いていて、笑顔に溢れていた




だけど今は―――




ゆっくりと辺りを見渡すと

薄暗い待合室には



もう誰もいなかった

< 309 / 353 >

この作品をシェア

pagetop