太陽と月





「おめでとうございます」




春の暖かい日差しが、柔らかく降り注ぐ

色とりどりの花が世界を鮮やかに彩る




俺が一番好きで

だけど、どこか切なくなる季節――





誰もいなくなったガーデンで、一人フラワーシャワーを片付ける

一面に広がった緑の上に落ちる、色とりどりの薔薇の花びら


まるで一枚の買いがの様に綺麗で、思わず目を細めた

そんな中、何気なく綺麗だったオレンジ色の花びらに手を伸ばす

その瞬間――




「――っ」




どこからともなく強い風が吹いて、花びらが一気に舞い上がった

つられる様に顔を上げると、綺麗な花びらが空に向かって伸びて行った



見上げた空の端に映ったのは

満開の桜




「―――悠理・・・さん」




舞い上がる花びらに吹かれて

思い出すのは、彼女と見た春




あまりにも幸せだった、その時を思い出して

俺は、思わず瞳を閉じた



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