太陽と月


ニッコリ笑った彼女が顔を出していたのは、披露宴会場についているバルコニー

てっきり飾りだと思っていた俺は、そんな場所に立っている彼女に驚いた




「どうやって上ったんですか!?」

「ハシゴがあるの!!」

「え?」

「ハーシーゴッ!! 下にあるから、おいでよ」




無邪気にそう言って、下を指さす彼女

そんな姿に無意識に頬が緩んだ




その言葉通り、披露宴会場に入るとカーテンに隠れる様にして、ハシゴが掛けられていた

それは、飾りだと思っていたバルコニーまで伸びていて、俺は迷いなくハシゴに足をかけた



ゆっくりと登っていくにつれて、明るくなる世界

温かい日差しが降り注いで、思わず目をしかめた



すると




「大丈夫?」




白む世界の中で、優しい笑顔で微笑む彼女が俺に手を差し伸べていた

真っ白で小さな手が春の日差しを浴びている




「手、掴んで」

「え?」

「早く。このハシゴあんまり頑丈じゃないの」



そう言われて、慌ててその手を掴んだ
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