太陽と月



「この場所は、大西くんに受け継ぐね」




不意にそう言った彼女は、ゆっくりと俺の方に顔を向けて柔らかく微笑んだ



その綺麗な瞳が

その柔らかい髪が

すべてが、愛おしくて堪らない



それでも、この胸を締め付ける想いは

彼女に伝わってはいけない




それはきっと、彼女を困らせるから――





「じゃぁ、毎年ここに桜を見に来ます」

「うん」

「来年は、ちょっとお菓子持ってきましょうよ」

「わっ、いいね!! 私最近新作のお菓子漁りに夢中なの」

「あ。じゃぁ、アレ食べました?」




他愛ない会話は、どんな事でも楽しくて

彼女の眩しい程の笑顔が嬉しくて

同じ空間で一緒に笑い合える事が幸せで

時間を忘れて、俺達はバルコニーの上で笑い合った




ハラハラと

桜が散っていく中で



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