太陽と月



――それから約束の時間になっても、一向に彼女は現れなかった




何度も時計を確認するが、俺の時計は壊れていない

辺りを見渡して、それらしい人を探すが見当たらない




「俺のミスか?」




一気に不安になって、彼女宛てに送った書類を思い返す

何度か履歴書に書いてある彼女の携帯に電話したが、留守電にしか繋がらない




「どうしたもんかな」




深い溜息と共に、もう一度時計を見直す



チャペルや会場の周りでは、スタッフが朝の清掃をしている

考えていても仕方ないと思い、玄関に近い場所を箒で掃いて待つ事にした



すると





「――ん?」




視界の端に見え隠れする黒いスーツ

思わず目を細めて、それを見つめると

隠れているつもりなのだろうか、電柱に身を隠しながらチラチラと会場を見つめる1人の女の子がいた




「あれって...」




遠くからだから分からないけど、どこか履歴書の写真の子に雰囲気が似ている

それに、まだ着慣れていないけど、あれはうちの制服だ
< 327 / 353 >

この作品をシェア

pagetop