太陽と月


「あははっ、聞こえてるから大丈夫だよ」




なんだろ

面白い子だ




「もしかして、瀬川花音さん?」

「――は..い」




笑いを飲み込んでから、そう訊ねた俺に空返事が返ってきて不思議に思う



そして、怪訝そうな顔で俺の姿を上から下へと舐める様にしてみた後

じーっと、まるで威嚇する様に俺の瞳を見つめた


その姿を不思議に思いながらも、再び口を開く




「良かった。もしかして道に迷ってるのかと思ったよ」




もしかして、俺の伝達ミスだったのかな

それなら、謝らなきゃ




「何度か携帯に電話したけど、出ないから心配してたんだ」

「電話?」




首を傾げて、不思議そうに俺を見つめる瞳

それでも、徐々にその表情を崩して

今度は真っ青な顔になりながら、俺の姿を見つめた彼女




百面相だ




「あの....もしかして」



彼女の様子を楽しみながら見ていると、小さな口から、今にも消えてしまいそうな声が聞こえた




「大西主任...ですか?」




俺の名前をオズオズと言う彼女

何かの小動物の様に、上目使いで脅える様に俺を見上げた


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