太陽と月


幸せそうな彼女を見て

俺は逃げた―――見ていられなかった

今にも、壊れてしまいそうで



そんな中、告げられた言葉は思いもよらないものだった

それでも、瀬川の事はそういう風には見れない

だから




「諦めませんから」




そう言った、瀬川の真っ直ぐな声に

逃げる様に俺はチャペルを後にした





グルグルと回る世界

彼女の笑顔と瀬川の涙が交差する




「バカだよな」




瀬川に言われた言葉が図星で

俺は大人げなくも、瀬川を切り捨てた

もっと、傷つけない方法があったのに




――〝藍原さんの事、待ってるんですか″――




確かに、俺は待っているのかもしれない

もう一度、一緒に笑い合える日を



あの一緒に桜を見た、あの場所で




そんな事、二度とないと分かっているのに

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