太陽と月


その笑顔がとっても眩しくて、何も言えずにコクンと小さく頷いた私

すると、横目で私を見ながら満足気にもう一度深く笑った主任が、再び桜に視線を移した




「この仕事してるとさ、季節をすごく身近に感じる事ができるんだ」

「身近に…ですか?」

「料理だったり、衣装だったり、会場の雰囲気だったり。季節によって、ガラッと変わるから」




そう言われて、確かにそうかも。と思う

付け焼刃だけど、今まで勉強してきたものは季節によって雰囲気が違う



花なんて特にそう

その季節にあった花を会場に飾っている




「でもさ、それはあくまで仕事の中であってさ、こうやって自然の四季を感じる事ってないんだよね」

「自然の四季?」

「うん。忙しさに埋もれて、花見なんてできないし、紅葉もクリスマスもいつの間にか終わってる」



そう言われて、昨日先輩に言われた事を思いだす

繁忙期になると、忙しすぎて一ヶ月があっという間に過ぎるって




「いつの間にか、仕事の中でしか四季を感じられなくなってしまってた」

「――」

「だからたまにここに来て、自分が今どの季節の中にいるか確認するんだ」




満開に咲き誇る桜を目を細めて見つめる大西主任

その横顔が、何故かどこか寂しそうに見えた
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