太陽と月








「んふぅ~」



目の前で大きな目を見開いたまま、茫然と私の姿を見つめる主任

フォークに巻いていたはずのパスタが、ポトリと皿の上に落ちたのを見る




「どうしたんですか? 大西主任――あ、これお代わり下さい」



ゴクンとピザを飲み込んでから、近くを通り過ぎて行ったウエイターに空になったピザの皿を指さす

すると、主任と同じように微かに目を見開いたウエイター

苦笑いを浮かべながらも、はい。と愛想よく頷いた




「よく食う...な」




すると、申し合わせた様に放心状態の大西主任がそう言う




「はい! 私、兄ちゃんが上に二人いるんで」

「え? それ関係ある?」

「2人ともスポーツをするんで、よく食べるんです。それで」

「あ~うん――瀬川もじゃぁ何かスポーツを?」

「いえ、私は運動オンチなんで」

「――」



さっき追加で頼んでいたサラダがちょうど運ばれてきて、大西主任が言葉を切った




昔から競う様に上の兄達とご飯を食べていた私

気が付いたら、どこまでも入る底なしの胃袋になっていた


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