太陽と月
まさか
カリカリカリ…
静かな車内に響く、ペンを走らせる音
視線の端でハンドルを握っていた影が動きを止めたのが目に入る
すると
「何書いてんの?」
人懐っこい声が隣から降ってくる
それと同時に動かしていた手を止めて、それを胸に抱く
「今日大西主任がお客様に話していた事です」
「俺が話していた事?」
「営業先でどう言えばいいか、勉強してたんです」
得意気にそう言って、埋め尽くされたノートを見る
我ながら汚い字だけど、まぁ私しか見ないからいいや
もともと人より頭の回転が遅い私
すぐに言われた事も忘れてしまうという、どうしようもない頭だから
忘れない様に、こうやって何でも書き留めてる
今日も大西主任の営業先に同行させてもらって、にこやかに話す主任の言葉を一言一句漏らさずに書き留めた