太陽と月



「ん。OK。その感じで残りも頼んだよ」



得意の人間観察を始めた私に急に視線を送って、柔らかく微笑んだ主任

さっきまでの端正な顔つきが一気に幼くなる

というか、可愛らしくなる



その姿に心臓が大きく一度跳ねて、胸が一瞬息苦しくなる




「あ..りがとうございます」

「もう少しだ。頑張れ」



そう言って、いつもの笑顔で私に書類を返した主任

茫然と椅子に座ったままの私の隣をそのまますり抜けて、再び自分のデスクに戻っていった




「はぁ~」




思わず出る溜息

その溜息の意味は分からないが、出したかった



ふと時計に目をやると、もう10時半

仕事に没頭していると、本当に時間が過ぎるのが早い

早く終わらせないと終電に間に合わなくなる




よし!! と気合を入れて立ち上がり

事務所の中にある資料室へ向かおうとした




その時―――




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