太陽と月
「泊まる!?」
「そ。交通機関は使えないだろうし、家まで歩いて帰っても、どうせすぐにまた会社に出勤しなきゃいけない」
「――」
「それに警備システムが働かないとなると、無人にするのは不安だし」
「――」
「――と、なると。泊まるしかないだろ」
そう言って、無言の私を横目にスタスタと事務所に向かって歩き出した主任
その後ろ姿を見て、慌てて駆けだした
「瀬川は新婦控室を使って」
「えっ!? 私も泊まるんですか?」
「え? 帰れる距離だっけ? 家」
私の言葉に驚いたのか、思わず立ち止まって目を見開く主任
その言葉にうっとなる
アパートは電車で20分の距離
ここから歩いて帰るには遠い
それに、この天気の中歩いていける自信はない
「と..遠いです」
「だろ?」
私の返事を聞いて、にーっこり笑って頷いた主任
そして、再び事務所に向かって足を進め始めた