太陽と月



「確かに、いいプランナーだったよ」




まるで一人言の様に小さく呟いた主任

長い睫毛を伏せて、手に持つハガキをじっと見つめていた



「社員からも、お客様からも頼りにされて。この仕事も、誰よりも楽しそうにやっていた」

「どうして…辞めちゃったんですか?」



そんなに凄い人なのに、どうして?

そんな疑問が湧いて、そのまま声に出した


すると、私の方に視線を向けてふっと小さく笑った主任

どこか寂しそうに




「結婚したから」

「――」



そう言った後、ゆっくりと笑みを崩さないまま、再びハガキに目を落とした主任

懐かしむ様に見つめるその視線が、寂しそうに見えて仕方ない




「太陽みたいな人だった」



そう呟いた言葉は、小さな事務所に静かに落ちた




主任がその時見せた表情の意味は

分からなかった


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