太陽と月



そう言われて、小さく頷いた後

お邪魔します。と呟いて中に入る



そんな私を満足そうに見てから、寝転がっていた方とは別にあったソファーに腰かけた主任




「こっち使って」

「いや..でも、こっちの方が大きいんで、主任がこっちを」

「いいから」



たじろぎする私を、優しく促す主任

なんだか優しさの塊みたいな人だなぁ



内心感動しつつ、言われた通り大きめのソファーに浅く腰かける

それでも、フカフカのソファーに腰を下ろすと、不思議とさっきまでの不安が溶けていった



静かな部屋に聞こえる雷の音と打ちつける雨の音

それでも、主任が側にいるからか怖いという気持ちはなかった



そんな中チラリと横を見ると、ごろりとソファーに寝転ぶ主任が天井を見上げていた

その姿をじっと見つめていると、1つの不安が湧き上がる




――私って、もの凄く邪魔なんじゃないかな




冷静になってよく考えてみて、花音

勢いと我儘でここまで来たけど、相手は主任で上司だよ!?

どんだけ話しやすいからって、ここまで甘えてどうすんのよ




――部屋に戻ろう

怖いのは我慢して

楽しい音楽でも歌って、紛らわそう



うん

戻ろう




「あの、主任―――」

「瀬川の名前ってさ。パッヘルベルのカノンから取ってるの?」



意を決して話し出そうとした時

大西主任の声が重ねる様に聞こえた


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