隣の芝生は青い
まさか、こんな日に高松さんに会ってしまうなんて。
そして今日の彼はスーツを着ていて、涙がとまってしまうくらい(実際は止まらないけど)素敵で、
今のボロボロな自分を見られるのが死ぬほど恥ずかしかった。
はやく彼の前から消えて、独りになりたい......
「すみません。目にごみが入ってしまったみたいで...失礼します」
慌ててバッグから鍵を取り出し、ドアを開けて中に入る。
そしてドアを閉めようとした瞬間。
「片瀬さん。」
ドアを閉める寸前。片方の手でそれを止められる。
「ほんとに目にゴミが入っただけ?
僕に聞かせてくれないかな。
君が泣いてる理由。」
少し開いたドアから彼の真剣な顔がみえる。
なぜ私にこんなに親身になってくれるのか分からない。普段の男性不振な私なら黙って部屋に戻っていた。
「おいで。」
「.......はい」
でも今の私はこの優しさに甘えたくて堪らなかった。
たぶん。