2番目は変わらない

初出社

私は家に帰ってから亡き父に報告をする。
お父さんの誕生日に本命の会社の面接…
受からないわけがない、なんて
余裕こいてるけど、本当は父の力に助けられたと思った。

仏壇ににお祝いのケーキを供える。

「お父さん、受かりました。
喜んでくれるよね?」

私はしばらく手を合わせていた。

ピンポーン…

「……はい」

ここに来る人なんてアイツしかいない。

「あ、私、お母さんだけど」

お父さんと別れたくせに
毎年この日には顔を出しに来る。

ガチャ…

私は無言で鍵を開ける。
鍵の開いた音を確認した母はドアを開けた。

「はい、これ。」

母は少し分厚い茶封筒を私に渡してきた。
いつもの1年分のお金。
次はまた1年後。
母はお金を渡せばいいと思ってる。

「あら、何かのお祝いかしら?」

供えたケーキを見て、聞いてきた。

「あなた、今年卒業だっけ?
就職決まったのね。」

私は無言でベランダから外を眺めていた。
極力、会話をしたくない。

「おめでとう。」

「…アンタに言われたくないっつーの。
お父さんに言ってほしいわ。」

私は母を睨んだ。
すると、母は少し悲しい表情をした。

「…恨まれて当たり前よね。
じゃ、また来年ね。」

「もうお金いらないから、
もう来ないで!ほっといてよ!」

バタン…

無情にもドアは音をたてて閉まった。





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