ピノキオとダンス
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「―――――――――はい、とりあえず、これまで」
パタンと音がして、千沙はハッとする。
「え?ええ?」
彼女は混乱して、自分の周囲を見回した。
そこは6角形の青い部屋。全ての面にドアがある、あの不思議な部屋だった。そして、相変わらず人形から人間になったピノキオが千沙の隣に立って、彼女と手を繋いでいた。
呆然と突っ立ったままで、彼女は目を瞬く。
一体今、何が起きたのだろうって考えて。隣を見ると、そこには平然とした表情の人間になったピノキオがいた。
「・・・今、あなたが」
「うん」
「私の・・・弟になって・・・」
最後まで言葉を出さなくてもピノキオにはわかったらしく、ゆっくりと頷いた。
薄い茶色の髪、一重の瞳、同じくらいの背丈。その薄い唇を持った男の子は、たった今、私の弟として会話していた、そう思って千沙は首を捻る。だけど、確かもう少しは幼い感じではあったけれど。千沙は目を大きく見開いたままでピノキオをじっくりと観察した。
私はさっき、目の前のドアをあけて、それでそれで――――――――――
人間になったピノキオが宥めるような表情で口を開いた。
「混乱するのも仕方ないよね。だけど言葉で言っても判らないだろうから、体験してもらうことにしたんだよ」
「・・・」
「ここは、千沙の世界の中心だよ。ここから君はいろんな世界で生活している君に出会えるんだ」
「・・・」