ピノキオとダンス


 捕虜と仲良くなったっていい事など一つもない。それだけはよく判っているのだ。この捕虜たちは3日後には見せしめとして広場で殺される。鬱憤の溜まった連合国の住人たちのはけ口としてなぶり殺しにされるのだ。下手に言葉を交わしてはいけない。それは自分の為にはならない。千沙は目を尖らせて周囲を見回す。

「・・・なあってば」

「捕虜は話すな」

 だーめだこりゃ、そう呟いた声が聞こえた。男は掴んでいた檻の棒から手を離し、どっかりと座り込む。

 もう何日もジャングルにいて汗を流していない自分の体から、キツイ匂いが立って千沙はそれにもイライラした。だけれども彼女はそれを振り切るように、森の向こうを嘗め回すようにゆっくりと目を向けた。

 大丈夫だ、自分を保つこと。そうしなければ、私も危ない――――――――――――――



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「・・・大丈夫?」

 ピノキオの声が聞こえて、千沙は自分が泣いていることに気がついた。

「・・・・」

「ショックだったんだね、今の世界が」

 繋いだ手を、もう一つの手でなでながら、彼が言う。千沙はほお、と息を吐き出して、空いている手で涙を拭った。


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