ピノキオとダンス
関係性はその都度変わる。色んな世界が、少なくともまだあと4つはあるのだろう。だけどどうして自分がそれを体験しなくてはならないのかが、千沙には判らないのだ。
こんなんだったら・・・彼女は重いため息と共に言った。
「自分の世界でよかったわ。彼はもう居ないけど、それでもあそこは平和だもの」
私は酷く寂しかったけど、それでも平和だったもの・・・千沙は彼女が生きていた場所を思い出そうと目を閉じた。
ピノキオが、繋いでいる手をユラユラと揺らす。
「ほら、次に行こうか。どれにするの?」
「行かなくちゃダメなの?」
「そうだね、もうここに来てしまったからねえ」
「・・・タバコを吸いたいわ」
「残念、僕は持ってないよ。でも前から思ってたけど、タバコは止めたほうがいいと思うよ」
千沙は思わずマジマジと隣の男を見た。つい、人形のくせに意見を?などと言いそうになって、慌てて口を閉じる。ピノキオを傷つけていいわけないじゃないの、そう考えて、千沙は仕方なく、次のドアを決めた。
ピノキオがまた、ドアにマジックで3と書く。
「目印だよ。間違えないようにね。ここはもう済んだってことだよ」
ため息を一つ落としてから、千沙は思い切ってドアを開けた。