ピノキオとダンス
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「・・・私、ここがいいわ」
「え?」
目を開けて、あの青い6角形の部屋に戻ったと判ると同時に、千沙はそう言った。
隣でピノキオが聞き返す。何て言ったの?って。
彼がマジックで3と書いたドアを指差して、千沙は言う。
「私はこの世界がいいわって言ったの。あなたと・・・恋人同士だった」
「うん、そうだったね」
「笑ってたわ」
「二日酔い酷そうだったけどね」
「楽しそうだった」
うん、とピノキオは頷く。彼の透明な光をたたえた瞳は、じっと閉じた「3」のドアを見詰めていた。
「私は今より年上だったし、まだ未婚だった。だけど、幸せみたい。だから、ここがいい」
「うん」
「ずっと入ってるわけにはいかないの?」
つないでいた手を、ピノキオがポンポンと軽く叩いた。